大ケガに涙した2023年、苦境超えてACLの舞台へ「ゴールで価値を証明したい」【田中 幸大選手インタビュー|後編】

田中 幸大選手
田中選手Instagram

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「泣き崩れたこともあった」立ちはだかった全治9カ月の壁

新天地では開幕節からスタメン出場を果たし、2ゴールを記録。続く2戦目でも1得点をマークし、順調な滑り出しを見せた。

しかし3月9日に行われたリーグ3戦目、奇しくも古巣のアルビレックス新潟シンガポール戦で、悲劇が襲いかかった。

「自分でも正直あんまり覚えてないんですけど、後ろから相手にプッシュされて、左足を着いた際に膝が内側に入ったのかな。

そのタイミングで、膝から明らかにありえないような”グリグリグリ”っていう音がしちゃって」

一度その場にうずくまったものの、メディカルスタッフによる治療を受けた後に、再びピッチへ入った。

しかし、安堵のため息をつくには時期尚早だった。

「ジョギングしてピッチに戻った際に、脛が前にズレてくるような感覚というか。膝がグラグラして。

『あ、コレただ事じゃないわ』と思って、入って15秒、20秒ぐらいでぶっ倒れました」

その後は肩を借りながらピッチを後にした田中選手。後に告げられた診断結果は、選手生命をも左右する傷害の1つ「前十字靭帯断裂」だった。

好況から一変し、自身を取り巻く世界は180度近く変化した。

「毎日苦しかったですね。

チームメイトが練習してる横で、僕は膝の曲げ伸ばしだとか、本当に単純作業のリハビリしかできなくて。

練習中に泣き崩れたこともあったし、大げさに言ったら”情緒不安定”な状況。

自分でもよく分からなくて。サッカーができなくなるのを受け止めきれない期間が、すごく長かったなと思います」

開幕から間もなく降りかかった「全治9カ月」の試練。サッカーの神様の存在をも疑いたくなる、高い壁が立ちはだかった。

「正直こんなに苦しい期間は無かったというか。サッカーやれてたら、こんなに苦しい思いすることは無いですし。

うまく自分の中で整理しきれない気持ちが出てくるんですよ、毎日リハビリしていく中で。それを毎日整理しながらやっていくような感じで。追いつかない時もありながら、周りの助けも借りながらやっていきました」

日々生まれ続ける様々な感情。仲間たちがピッチを駆ける中、4時間を超えるリハビリやトレーニングと向き合う毎日。

長い暗闇を進み続ける中、自らの中に生まれたのは「感謝」の気持ちだった。

「自分1人だったら絶対ここまで来れなかったと思うし。

(手術で)日本に帰っている間に家族、友達とか、支えてくれた人がいたおかげで。

こっちに帰って来てからは、トレーナーが付きっきりで居てくれて。もちろん厳しいことも言われましたし、でも本気で自分に向き合ってくれて。

結果、支えてもらった人への感謝が自分の中で芽生えて『この人たちのために、少しでも多くの点を取ろう』という気持ちになりました」

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