【内山竣太選手 寄稿】改札なし、無人支払い、外で寝る赤ちゃん。信頼で社会が回る国フィンランド

【内山竣太選手 寄稿】改札なし、無人支払い、外で寝る赤ちゃん。信頼で社会が回る国フィンランド
本人提供

「海外」と聞くと「危なそう」「怖い」「治安大丈夫なの?」と思う方がいるかもしれません。実際に場所によってはそれらの心配が的中してしまう場所もあると思いますが、フィンランドは全く違います。

ここフィンランドでは他者を信頼することが前提の上で社会が成り立っています

そのため、改札が無くても、現金の無人支払いシステムだとしても、外で赤ちゃんが一人で眠っていても安全なのです

基本的に日本人と同じような国民性で、ルールや常識には忠実な国であるフィンランド。今回はそんなフィンランドで日常生活に転がる、信頼により成り立っているシステムについていくつか紹介します。

(サムネイル写真はChat GPTにより生成してもらいました)

電車の改札がなく、チケットチェックがない

まず一つ目は、フィンランドは公共交通機関利用時には改札を通るというシステムがありません。

同時に、チケットのチェックもほとんどないのです。

いわゆる日本でいう改札や整理券のシステムがなく、電車やバス、地下鉄内でのHSL(チケットや公共交通機関を管理運営してる会社)従業員によるチケットチェックも滅多に行われません。(バスのみ乗車時に運転手に見せる)

そのため、事実上タイミングや運さえ良ければ無料で電車や地下鉄、路面電車に乗れてしまうのがヘルシンキエリアの公共交通機関システムになっています。

それでは、それらをどのように管理しているのか。

それは、高額な罰金制度公共物では皆当たり前のようにチケットをもってるはずだからその考えを信用しようという考えに基づきます。

仮にチケット所持を尋ねられる現場に遭遇した際に持っていなければ100€(日本円で約18100円)の罰金。従業員を直前で発見し慌てて購入したとしても、購入した時間などが見える仕組みになっており、数分前まで無賃乗車していたことが丸わかりなので、その際にも同額の罰金が科せられます。この額はフィンランド人にとってもかなりの痛手です。

またフィンランド人の妻に無賃乗車ができる可能性について聞いたことがあるのですが、普通のフィンランド人であれば100€の罰金リスクを払ってまでそのようなことする人は基本的にはいない。とのことです。

まれに無賃乗車をし、罰金を科せられる人を見かけますが、確かにその人数の割合や数は他の国で同じシステムを導入したときに想定されるよりも圧倒的に少ないのかもしれません。

確認者のいない現金支払いシステム

公共交通機関のみならず、フィンランドを象徴するサウナの現場でも信頼文化は現れています。

以前妻と訪れたサウナにて、現金払いしか受け付けていない施設がありました。

キャッシュレス化が進んでいるフィンランドにおいてこれだけでもすでに珍しいのですが、さらに驚いたことがその先にありました。

その現金支払いを確認する人が全くいない

簡易的に用意されたごく普通の封筒内へ、客側が各自で現金を入れるというかなり原始的な支払いシステムだったのです

こんなシステムに出くわしたのは今のところこの一度のみですが、言うなれば日本の地方などで稀に見られる野菜などの無人販売所のようなイメージです。

それを首都であるヘルシンキ、フィンランドの代名詞であるサウナ施設で見られるのがフィンランドです。

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その時に見た実際の支払い封筒
この中に大人であれば10€を自分で入れるシステム

ロッカーのないサウナ施設

こちらも上記と同じくサウナ現場でのワンシーンです。

サウナ発祥の地であるフィンランドには無数の公共サウナがありますが、個人用のロッカーのないサウナに出くわすことも珍しくはありません。

私もこれまで数多くのサウナを訪れていますが、盗難被害にあったことはもちろん、そのような現場に居合わせたこともありません。

これも、フィンランドの代表的な文化であり、国民的娯楽であるサウナを公共の場で楽しむような人たちが、他人の荷物を盗むような真似をするわけがないという信頼ありきで成り立っている仕組みです。

この仕組みに慣れるまでは、自分の荷物をロッカーのない場に放置することに抵抗がありました。しかし、何も問題がなかった成功体験を重ねると、フィンランドのサウナ現場に悪い人は基本的にいない。というマインドになり今ではこの仕組みを信用しきっている自分がいます。

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ロッカーのないサウナ①
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ロッカーのないサウナ②

共用スペースの運営システム

次に日本ではあまり見かけることのなかった、共用スペースやエリアに関しての使用方法の違いについてのお話です。

現在私の住んでいるアパートには、居住者が無料で使用できる洗濯場や乾燥室があります。レンタルパーティールームまでも事前予約にて無料で使用することができます。サウナに関して有料ですが、こちらも共用になっています。

一歩外へ出ると、子供たちやサッカー少年たちにはありがたいことに、至る所に無料で使用できる人工芝グラウンドがあります。

地元のサッカーチームの練習はもちろん、近隣の学校や幼稚園の子供たちが授業で使用する光景も当たり前です。

通称「青空ジム」と私が呼んでいる、誰もが利用できるアウトサイドの無料ジムも国中の至る所にあります。

このような無料又は有料で誰もが気軽に利用できる施設などがフィンランドにはたくさんあります。

「公共物が無料であろうが、外にあろうが、誰もがアクセスできるものであろうが、当たり前のルールに則り誰もが平和に使用するであろう」という社会の共通認識の現れです。

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青空ジムでトレーニングに励む赤ちゃん
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アパートに備えられてる共同サウナ

ひとりでに眠る赤ちゃんたち

最後に、フィンランドでは、カフェやレストランの外、バスや電車といった公共交通機関にて、ひとりでに眠る赤ちゃんを見かけることがあります。

もちろん両親の目に届く範囲で行われていることですが、他の国で同じことをすると何らかの事件に巻き込まれるリスクもあるかもしれません。

しかし、フィンランドではベビーカーでひとりでに眠る赤ちゃんの光景が昔からの馴染みの光景として今でも見られます。

その背景として、外気浴が赤ちゃんにとって健康だという科学的根拠、自然との共存意識などがあるようですが、安全であり周囲の他者を信用していることが何よりも大事です。

北欧以外の国ではまず見ることのできない光景でしょう。

もちろん繁華街といった治安が良くないエリアで行われることはまずないですが、妻の育った地方都市や治安のよいエリアでは今でも当たり前の光景だそうです。

まとめ

フィンランドは上記の実例からわかるように、他者を信頼することが前提で社会が成り立っている国です。

国の成り立ちや歴史、地理的条件など、社会システムを構成する要素は多岐に及ぶため、日本とフィンランドについての良し悪しを単純比較することは不可能です。

しかし、まだまだ面白いシステムがたくさん隠れているであろうフィンランド社会について、これからも日本との違いなどの切り口から note にて皆さんにシェアし続けたいと思います。

今回も最後まで読んでいただきありがとうございました。

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